カラヤンも惚れ込んだゴールウェイのサウンドは、輝かしく美しく朗々と鳴り渡るもので、
オーケストラ出身の強みを生かしてか協奏曲での演奏も実に巧み。
このセットは、フルートの主要レパートリーを協奏曲から小品まで優れた音質で網羅した本格的なもので、
資料的な価値も高いものとなっています。
【主要フルート作品を網羅】
バッハやヴィヴァルディ、ヘンデルなどのバロック音楽から、リーバーマンやアーノルド、バークリー、コリリアーノなどの20世紀音楽まで、ほぼ3世紀に及ぶ期間に生み出された主要なフルート協奏曲や独奏曲を大量に収録。フルート事典の趣きすらある膨大な作品数です。
【フルート編曲で聴く多彩なレパートリー】
ゴールウェイはフルートのレパートリー開拓に熱心ということもあり、とりあげたフルート用編曲作品の数もかなりのものです。
くまばちは飛ぶ、カルメン幻想曲、剣の舞などの速吹き作品や、パッヘルベルのカノン、月の光、タイスの瞑想曲、バーバーのアダージョなどの抒情系作品など、おなじみの小品をフルートで置き換えた編曲ものは楽しいですし、アルペジョーネ・ソナタや、ある貴紳のための幻想曲、ヴィヴァルディの四季といった規模の大きめの編曲作品も聴きごたえがあります。
【ポピュラー・レパートリー】
クラシカルな作品だけでなく、ゴールウェイは民謡やポピュラー・ソングもよく演奏していました。「ダニー・ボーイ」や「アメイジング・グレイス」などの、欧米名曲のほか、日本やオーストラリアの作品からクリスマス・キャロル、映画やミュージカル、ポップスの有名曲まで、ジャンルを超えた名旋律へのこだわりには実に意欲的なものがあります。
【豪華な共演陣】
マルタ・アルゲリッチ、アンドレ・プレヴィン、ネヴィル・マリナー、ロリン・マゼール、マイケル・ティルソン・トーマス、カナディアン・ブラス、東京クヮルテットのほか、クレオ・レーン、ザ・チーフタンズなど、多彩なレパートリーを支える共演者にも恵まれています。
【30年以上に及ぶ録音】
71枚のCDはほぼ発売順の構成。1975年のRCAデビュー盤となった名曲集「黄金のフルートを持つ男」(Disc1)、アルゲリッチとのフランクおよびプロコフィエフのフルート・ソナタ集(Disc2)に始まり、2008年の「オライリー・ストリート」(Disc70)に至るまで、30年以上に及ぶレコーディング活動の全貌を辿ることができます。Disc71は、他のアーティストのアルバムに参加したトラックなどを中心に集めた内容です。
【映像】
2枚のDVDはいずれも過去にRCAでレーザーディスクとして発売されていたもので、イギリスの「コンチェルト!」シリーズの一環で制作されたモーツァルト「フルートとハープのための協奏曲」をめぐるドキュメンタリーおよび全曲演奏、それにザ・チーフタンズとの楽しい共演を収めています。
【セットの仕様】
それぞれのディスクは、アメリカでの初出LPデザインによる紙ジャケットに封入。ハードカヴァーの別冊解説書付き。ボックスのサイズは、横24.7cm x 縦13.8cm x 高さ13.3cmで、重量は2.9 kgとなります。
【ゴールウェイ・プロフィール】
1939年1月28日、ベルファストに誕生。幼少からブリキ製の小さな横笛、ティン・ホイッスルを巧みに吹いていましたが、父親からフルートを教わるとその楽器に夢中になり、やがて、ミュリエル・ドーンに本格的なレッスンを受けて基礎を習得、12歳のときには、フルート・コンクールでジュニアの部、シニアの部、総合の部の3部門で一等賞を獲得するまで上達。その後、ヴァイオリンとピアノも学び、ピアノ調律師の助手を務めたりもしますが、15歳のときには奨学金を得て、ロンドンの王立音楽院でジョン・フランシスにフルートを師事。当時のゴールウェイは、フランスの名手マルセル・モイーズのレコードを聴いて強い影響を受けたともいいます。引き続き、ギルドホール音楽院で、ジェフリー・ギルバートに師事したゴールウェイは、21歳のときには、フランス政府の給費生となり、パリ音楽院のクリュネルのもとで研鑽を積み、ジャン=ピエール=ランパルとも交流します。
ロンドンに戻ったゴールウェイは、コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団や、BBC交響楽団を経て、ロンドン交響楽団の首席奏者となり、同楽団のアメリカ公演の際には、ヴァーモント州に住むモイーズのもとを訪ねて指導を受けてもいます。その後、ロイヤル・フィルの首席奏者を務めますが、1969年にはベルリン・フィルの首席奏者に就任。黄金のフルートを吹く美しい音色の奏者として一躍有名なり、1975年に退団すると、RCAレーベルと専属契約を結び、ソリストとしての活動を本格的に展開。多くのレパートリーを意欲的に紹介する一方で、自ら現代の作曲家達にフルート作品の作曲を委嘱してフルートの世界をさらに広げるべく尽力。2001年にはナイトの称号を授与、現在に至っています。(HMV)