台座にも『F-117 STEALTH』と書いてありますが、ステルスと言えば、この機体。
64機だけ製造された、初代ステルス戦闘機です。
尾翼に描いてある37TFW(第37戦術戦闘航空団)は、湾岸戦争に参加しており、イラクのレーダーサイト、ミサイル基地、作戦センター、橋、飛行場の強化シェルター、核研究施設などを空爆、破壊しまくりました。
この機体は828号機(84-828)ですが、1990年6月にユタ州のヒル空軍基地で一般公開されて有名な機体です。
機密の塊なのと、ステルスコーティングが傷に弱い為、機体の周囲にはロープが張られ近づくことが出来ず、ガードマンが警備する中での展示でした。
◆趣味のF-117ナイトホーク
ベトナム戦争時、北ベトナムの地対空ミサイル基地を潰す為の専用機が作られました。それがワイルドウィーゼル。
F-105サンダーチーフやF-4ファントムⅡからの改造機で、AGM45シュライク(対レーダーミサイル)の運用能力を持ってました。
ジャングルに隠された地対空ミサイル基地を探す為に飛び、敵のレーダー波を検知したらシュライクを発射。シュライクは対レーダーミサイルなので、電波源(レーダー)目掛けて飛んでいき、ミサイル基地を破壊する。
その後、防空網の穴を抜けて、爆撃機が侵攻。安全に空爆する。という流れです。
でも敵のレーダー波を検知した時は敵に見つかってる時なので、敵も地対空ミサイルを射って来るし、敵の戦闘機も飛んでくるので、ワイルドウィーゼル機もかなり落とされました。
そこで次世代のワイルドウィーゼル専用機として、ベトナム戦争後の1975年から開発が始まったのがF-117ナイトホーク。
電波を反射しないステルスにすれば、安全に敵のミサイル基地を破壊できるじゃん! という考えの元、莫大な予算を投じて本格的なステルス機が開発されます。
レーダーは発信した電波が飛行機に反射して戻って来るのを感知する装置なので、電波が戻って来なかったら、スクリーンには何も映りません。電波が戻らない様に明後日の方向に反射させたり、電波吸収材で電波を吸収してしまうのがステルス技術です。
曲面があると、電波を真っすぐに反射してしまうので、F-117は機体全体が平面で構成されてます。この為、シルエットがカクカクしてます。
垂直・水平尾翼は無く、V字型の2枚の尾翼で機体をコントロール。
こんな形なので安定性が凄まじく悪く、というか、飛ぶのが不思議な形状をしているので、操縦系はコンピューターをを介した4重のフライバイワイヤ。常にコンピューターが機体に補正を掛けながら飛んでます。
機体はなるべく金属を使わない複合材製で、機体表面には電波吸収材が貼ってあります。
電波吸収材の色が黒いので機体は真っ黒ですが、夜間爆撃に使われる飛行機なので黒の方が都合が良い。というのもあります。
また、エアインテークやエンジンの排気口も機体の上面に設置し、赤外線対策を取ってます。
ステルス最優先で設計されてる為、最高速度もマッハ0.85と遅く(朝鮮戦争の頃のF-86Fセイバーよりも遅い)、加速用のアフターバーナーも無し(赤外線で探知されるのを防ぐため)。
レーダーも無し(レーダーは電波を出す装置なので、敵に見つかるから)。
敵のレーダー基地、ミサイル基地を潰すワイルドウィーゼル専用機なので、機関砲も無し。
武装はレーザー誘導爆弾のみで、空対空ミサイルも無し。
つまり、敵の戦闘機と戦う手段が皆無。
型番が『F』で始まるから戦闘機のカテゴリーなのに、運用方法は夜間爆撃機とゆー不思議な軍用機です。
しかもF-112~116をすっ飛ばして、なぜか『117』。機密の塊みたいな機体なので、性能諸元どころか、『F-117』という型番も、なぜそんな変な型番なのか分かっていません。
F-117が大活躍したのが、1991年の湾岸戦争。連合軍の侵攻に先駆けて夜間飛行し、イラクのレーダー基地を爆撃。破壊しまくりました。
F-117は機体表面に電波吸収材を貼ってるのですが、スポンジの様な樹脂なので、傷や熱に弱く、頻繁に貼り直しが必要で、運用経費がバカみたいに掛かります。
超高性能なステルス戦闘機のF-22やステルス爆撃機のB-2が完成し、更にF-35も量産されてる事から、F-117は2008年に全機退役し、順次解体され・・・てませんでした。
2014年以降、アメリカの各地で目撃されたり、写真を撮られたりしてます。ステルス機なので、演習の時の敵ステルス機役として運用されている模様。
2021年にも演習に参加しているので、退役はウソで、未だに現役みたいです。
まあ、存在そのものが極秘の飛行機ですから!