・書籍名(英名) : A Journey with Friedrich Ritter along the Coast of Chile and Peru: A pictoral record of Ritter's cacti (Photo by A. Buining)
・著者名 : Paul Hoxey
・出版社:Paul Hoxey (自費出版)
・発行年:2013年
・形式 : 洋書(英語)、295×210mm、ソフトカバー、94p
手元に余分があるので出品します。 新刊を個人的に保存していましたが、焼けはなく、多少のスレはありますが、ほぼ新書となります(写真参照)。
<書籍説明>
本書はFriedrich Ritter(フリードリヒ・リッター、1898〜1989)が記録したFRナンバーのサボテン産地について、友人研究者のAlbert Buining(アルバート・ブイニング、1901〜1976)が夫婦で一緒に、F. Ritterと自動車でチリ〜ペルーに旅行した時に撮影したカラーフィルムを、イギリス人研究者のPaul Hoxey(ポール・ホクシー)が2013年に編集、自費出版した写真集になります。
著者のP. Hoxeyは米国のサボテン研究者で、分類学を中心に様々な群の論文を手掛けています。また、過去の研究者の歴史をを追って、サボテン科には非常に多い出自のあやふやな学名に対する検証が得意なようです。このため、本書のようなF. RitterとA. Buiningの足跡をまとめられたのだなと感じます。
F. Ritterはドイツのアマチュア出身のサボテンの研究者で、日本語ではあまり紹介されていないことから正統な評価がなされていませんが、南米サボテン研究における最重要人物となります。とにかく緻密で手数が多く、分類学者としても膨大な新種や分類体系の変更記録を膨大に残しています。
ドイツの古典サボテン研究といえばナーセリーでの栽培株を中心に研究をしたCurt Backeberg(クルト・バッケベルグ)が最も有名かと思います。一方で、F. Ritterは同時代〜1980年代までに自身の足で稼ぐフィールドワークで活躍した人物となります。分類学的な研究については、裸名や無効名だらけのC. Backebergに比べると、論文のレベルや手数も含め、圧倒的にF. Ritterに軍配が上がります。
F. Ritterは第二次世界大戦後の1952〜1976年の約25年にも渡り、単身南米に渡って各国に移り住みながら、自動車と徒歩で各地のサボテンを採集しつつ、分類学的な記録や採集を続けました。その地点数は数千ヶ所にのぼり、いわゆるFRナンバーとして、実妹のHildegard Winter(ヒルデガルド・ウィンター、日本ではウィンター商会として紹介される)を通じて通販で種子販売がなされ、いまだに世界各地でFR系統が栽培され続けています。
また、1950年代後半から新種記載や分類体系の提示も様々な科学雑誌で行いました。キャリア終盤の1979〜1981年には自費出版で、その総決算となる4冊組の"Kakteen in Sudamerika" を出版しており、現在でも南米サボテン分類学研究における最重要資料の一つとなっています。ただし、この文献は小さなハンドブックサイズで、目がクラクラするようなドイツ語のタイプライターテキストでビッシリ埋め尽くされている一方で、1冊につきカラー写真が十数枚しか収録されておらず、残りは全てモノクロ印刷となっています。南米サボテン情報の宝庫のような文献ではあるのですが、ここが国内ではウケが良くないどころか、殆ど国内では知られていない所以かと思われます。
本書は、A. Buining夫妻が1968〜1969年にかけてF. Ritterと一緒にペルーとチリのサボテン産地を一緒に旅行した際に、A. Buiningにより撮影されたサボテン株や自生地のカラーフィルムを編集した写真集となり、同氏のフィールドノートのメモを元に編集されています。A. Buiningはドイツ人サボテン研究者で、中米のDiscocactusのリビジョンを残しています。コミニケーション能力に長けた人物だったらしく、古い同好会誌のあちこちで手記を見かけ、また編集にも携わり、堅物と評されたF. Ritterとも良い関係を築いていたようです。
本書で最も重要なのが、先に示したF. Ritterの文献ではモノクロ印刷(元写真は全てカラー)でしか目にする事が出来なかったFRナンバーの自生地株がまとめてカラーで掲載されている点です。F. Ritterが案内役として一緒に回っていますから、ピンポイントでFRナンバー地点とサボテン株の写真が一致しており、学術的にも極めて価値が高く、個人的にはよくぞ出版してくれたと感じます。
チリ〜ペルーにかけた分布するCopiapoaやEriosyce(Islaya, Pyrrhocactus, Horridocactus, Thelocephala, Neoporteria)を中心に多くの種の自生地株や自生地環境のスナップが全てFRナンバーと共に収録されており、本書で初めて野外株のカラー写真が紹介された種が多く掲載されています(今ではシノニムとして扱われているものを含む)。また、写真の少ない生前のF. Ritterや当時のチリの街中も少ないながら収録されており、歴史的にも貴重な写真資料となっており、情報価値が極めて高い良書だと思います。
ただし、自費出版の宿命で冊数が少なく、増販もないので、現在は絶版となり、かなりの入手難となってしまっていました。個人的にはF. Ritterの研究や記録を知る四大書籍の一角だと感じています(他はKakteen in Sudamerika 1~4, Ritter in Colour, Englera 16)。
南米サボテンをコレクションしていたり、F. Ritterの軌跡を知りたい方には是非ともお勧めしたい一冊となっています。