本来日本における「ルパン」は大正~昭和前期にかけて保篠龍緒訳が定番だったのですが、1950年代に翻訳権が改めて設定され、各種の訳本が出るようになりました。その中で児童向け部門をになったのがこの南洋一郎版です。1958年から1961年にかけていったん全15巻で刊行された南版全集は少年読者の熱烈な支持を受け、1971年から1980年にかけてシリーズ全てを網羅(ボワロ=ナルスジャック作の新シリーズも含む)した全30巻が刊行されました。1999年に内容を再編集した「シリーズ怪盗ルパン」に引き継ぐまで、およそ40年にわたる大ロングセラーとなった南版「怪盗ルパン全集」は、大人向けもふくめて他の訳本の存在をまったく知らない人も出るほど「ルパン」のスタンダードの地位を獲得したのです。