『The Art of Fly Making』は、英国の伝統的フライタイイング文化を体系的にまとめた、William Blackerによる歴史的名著です。19世紀ヴィクトリア朝期に刊行された本書は、サーモンフライを中心とする華麗で精緻なフライの製作技術を詳細に解説し、今日に至るまでクラシック・フライタイイングの礎として高く評価されています。
ウィリアム・ブラッカーはロンドンの名高いフライドレッサーであり、その作品は芸術品と称されるほどの完成度を誇りました。本書では、当時の英国およびアイルランドで用いられていた伝統的なサーモンフライのレシピ、使用素材、巻き方の工程が具体的に示されています。フェザーやファー、シルクスレッド、ティンセルなど、多様な素材の扱い方を解説し、それぞれの特性を活かした色彩構成やバランスの取り方についても触れている点が特徴である。
特に注目すべきは、単なる実用的な釣り道具の作り方にとどまらず、フライを「芸術作品」として捉えている点です。左右対称に整えられたウイング、滑らかに重ねられたハックル、緻密に計算された色彩の対比など、その技巧は視覚的な美を追求する姿勢を強く示しています。また、当時入手可能であったエキゾチックな鳥類の羽根(現在では使用が制限されている種も多い)を駆使した豪奢な意匠は、19世紀英国の装飾文化や帝国的交易の広がりをも背景に感じさせます。
本書には彩色図版も収録され、完成したフライの姿を視覚的に確認できる構成となっています。これらの図版は資料的価値が高く、クラシックサーモンフライ研究における重要な一次資料とされています。現代のフライタイヤーにとっては、失われつつある伝統技法を学ぶ手引きであると同時に、技巧と美意識を磨くためのインスピレーション源ともなっています。
『The Art of Fly Making』は、実践的マニュアル、芸術書、そして歴史資料という三つの側面を併せ持つ一冊です。フライフィッシングの世界において、単なる釣果を超えた創作の喜びと審美的価値を提示した点こそが本書の最大の功績であり、フライフィッシャー必携の書であると言えます。
※古書ですが状態は非常に良好です。カバーに経年に伴う汚れが僅かにあります。
※古書にご理解のある方のみご購入をご検討ください。
※仕事柄迅速に対応出来ないことがありますが、最後まで誠意をもって対応いたします。