FRANCK: Sonata in A Major for Violin and Piano
MOZART: Sonata in E Flat Major for Violin and Piano, K. 481
ERICA MORINI, VIOLIN
RUDOLF FIRKUSNY, PIANO
DECCA DL 10038
ライナーノーツは往々演奏者への讃辞で埋め尽くされ"贔屓の引倒し"のやうな様を呈するものだが、こと当LPに関する限り至極的を射たことを語っているものと首肯させられる。その冒頭『現下、ヴィルティオーゾ中心の時代にあって巨匠二人が室内楽デュオを組んで演奏することなど滅多に見ないことであり、更に稀なことは藝術性豊かな比類ない音楽的趣味を有する演奏者両者が携えて藝術上の昇華と云うべき境地を成就していることである』とあり、その言を裏付ける同主旨の新聞評のくだりを掲載している。
ちなみに当録音盤は、元ニューヨーク・タイムズの音楽欄主筆Taubman著”Guide to Listening Pleasure, 1968, Macmillan)"による選定盤である。
当時、モリーニ、フィルクスニーの両者ともにLPの録音実績からもソリストとして一家を成し、超一流の演奏家としての楽壇の評価を得ており、この一枚に収録された二つのソナタに聽く二人の合奏の完成度に比肩するやうな録音は他に殆ど無かった。とりわけデュオ双方に巨匠的な名人芸が要求されるフランクのソナタの録音を例にとると僅かにフランチェスカッティ&カサドシュ、フェラス&バルビゼ、そしてオイスラフ&リヒテルらによるものがあるのみで、一部に熱心なファンを擁するジグモンディ&ニッセン夫妻やジェルトレル&ファルナーディのデュオによるものでさえ藝格にスケールの大きさを欠き、とてもモリーニ&フィルクスニーのデュオには及ばなかった。SP録音から初期モノラル時代にかけてはティボー&コルトーに始まりルービンシュタイン&コハンスキー、デュボア&マース、スポールディング&ブノワ、レナルディ&リスト、タッシュナー&ギーゼキング、フックス&バルサムと実に多士済済な超一流の顔ぶれによるものがあり、それらの幾つかは現在でもCD復刻盤で聴くことが出来る。
当LPの両盤面は実に美麗で殆ど演奏のこん跡がないミント・レヴェルである。念のため試聴するも、クリック・ノイズの類は全く聴かれなかった。ジョケットは経年の傷み、汚れが見られるが、ビニールの収納袋で保管されていたせいか傷みは全く見られない。