BLACK SABBATH - FORBIDDEN ROUGH MIX with Tony Martin(1CDR)
Rough mix demos with Tony Martin vocals
2024年リリース
公式リミックス盤も告知となり、再評価の気運が高まっているスタジオ作品『FORBIDDEN』。そのデモ・トラックを活用した別バージョンが誕生です。
そんな本作の正体とは「FORBIDDENの歌入りラフミックス」。5月にリリース予定の公式リミックス版とはまったくの別モノ(のハズ)です。本稿に目を留められた方ならご存知と思いますが、『FORBIDDEN』にはデモ音源が発掘されています。今を去ること20年前に故コージー・パウエル所蔵のカセットから起こされたデモは当店の『FORBIDDEN ROUGH MIX』として公開され、その後にプレス名盤『DEFINITELY FORBIDDEN(Shades 149)』の一部として永久保存も実現。現在では、BLACK SABBATHのデモ・コレクションでも欠かせない大定番でもあります。
●初公開となる「歌入り仕様のデモ・アルバム」
しかし、その伝説デモは歌入れ前のインスト版。トニー・アイオミ/コージー・パウエル/ニール・マーレイによるトリオの妙技はたっぷり味わえるものの、音楽作品としては片手落ち感も拭えないものでした。そこで製作されたのが本作。お馴染みのオフィシャル作品『FORBIDDEN』からトニー・マーティンのヴォーカル・トラックを抽出。インストだった『FORBIDDEN ROUGH MIX』にシンクロさせたマッシュアップ・アルバムなのです。
もうピンと来ている方もいらっしゃると思いますが、この音源を製作したのは、プレス新名盤『THE ETERNAL IDOL: FEATURING RAY GILLEN(Zodiac 652)』にも関わっていた研究家。「レイ・ギランが歌うSEVENTH STARデモ」がボーナス収録されていましたが、あの傑作トラックと同時に製作されたものなのです(そもそも公式に先駆けてレイの最高峰デモを発掘した人物でもあります)。当初はリリースどころかネット公開も禁止でコアなマニア・コミュニティのみで細々と流通していたようですが、『FORBIDDEN』の公式リミックス版の告知を受け、記念としてご提供頂きました。
●本来のSABBATHサウンド轟くラフミックス
そんな本作は「まるっきりイメージの違うFORBIDDEN」。猛烈に生々しく、それでいて思いっきりサバスっぽい。そもそも『FORBIDDEN』は名盤扱いされないアルバムではありますが、その要因はアーニー・Cによるプロデュースの失敗。ラップメタル・バンドBODY COUNTであるアーニーはサバスのファンとは言ってもオジー時代限定で、マーティン時代の美点をまったく理解していなかった。さらに同じBODY COUNTのアイス-Tにラップで参加させるなど、悪夢のような所業で作品を愚弄。結果として落胆したコージーは脱退の道を選び、当のアイオミですら駄作認定してしまうのです(だからこそ、5月にリリースされるリミックスが悲願になったのでしょう)。
本作は、そんなアーニー・Cの痕跡がほとんどない。本来のBLACK SABBATHサウンドそのものなのです。アーニー・サウンドでは「ただのドラマー」扱いだったコージーはいつものようにドラマティシズム全開で暴れ、アイオミのギターも生丸出しで暴虐に吠えまくる。その合間で舞うニールのベース・ランも躍動し、『TYR』よりも格好いいくらいです。
●まるでスタジオ・ライヴ盤のようなFORBIDDEN
そんな旨みはインスト『FORBIDDEN ROUGH MIX』でも味わえたわけですが、歌入りの本作はさらに聴き応えが爆増! 『FORBIDDEN』はヴォーカルにも逸話のあるアルバムでして、実はマーティンは事前にデモを作っていない。アイオミ/コージー/ニールのバッキングを聴きながら即興で歌詞とメロディを何通り(3種?)か歌い、その中からアイオミが気に入ったものを公式採用した。つまり、ヴォーカルはすべて即興ライヴなのです。そのインプロヴァイズ能力にも驚かされますが、そのライヴ感がデモ・サウンドにぴったりとマッチ。まるで「4人揃ってのスタジオ・ライヴ盤」のように聞こえるのです。
しかも、作り込みの完成度もスゴい。実のところ、似た企画は以前も考案された事があるのですが、演奏スピードやアレンジの違い等が難点で、そのままではシンクロ不可能でした。ところが、本作は完璧。ピッチは変更の違和感が発生しやすいヴォーカルを主軸にされているらしく、ステレオ感は逆にバッキングをベースに両者を調整。単に重ねているのではチグハグなるところを、細心の注意を払って音楽作品として組み上げられている。また1曲目「The Illusion Of Power」にはマーティンのヴォーカルがシンクロされている一方、アイス-Tのラップは削除されている。こんなところにも徹底的に「アーニー・C以前のFORBIDDEN」を目指しているのが分かります。
オリジナル『FORBIDDEN』では日本盤ボーナスだった「Loser Gets It All」も含めた全11曲のデモが収録されているわけですが、本作はさらに名曲「Kiss Of Death」の別バージョンがもう1テイク追加収録されています。基本的には本編8トラック目と同じですが、ラストに公式盤と同じ時計のS.E.が追加。本作を雰囲気たっぷりに締めくくってくれます。
30年近くに渡って迷作扱いだった『FORBIDDEN』。その汚名をすすぐ「歌入りラフミックス・アルバム」です。コージーの妙技が映える「I Won't Cry For You」やリフがクールな「Blues(Sick And Tired)」、「Can't Get Close Enough」「Rusty Angels Can't Fly」等々………「こんなに良い曲だったっけ?」「TYRに入っていてもおかしくないじゃないか!」と目からウロコが12枚まとめて落ちることでしょう。ラフ・ミックスの魅力にも改めて気づかせてくれる1枚。どうぞ、存分にお楽しみください!
★『FORBIDDEN』の歌入りラフミックス・アルバム。話題の公式リミックスとは別モノで、“コージー・テープ”由来のインスト・デモに公式盤のヴォーカルをシンクロさせた音源です。凝りに凝ったシンクロは極めて自然で、まるで最初から4人が揃ったスタジオ・ライヴのような仕上がり。アイス-Tのラップも削られ、サウンドもアーニー・Cの影響を感じさせない生々しさ。「サバス本来のFORBIDDEN」が楽しめるスタジオ名盤です。
1. The Illusion Of Power (without Rap Vocal)
2. Forbidden
3. Shaking Off The Chains
4. Can't Get Close Enough ★公式より格好いい
5. Guilty As Hell
6. Black Ice (a.k.a. Get A Grip)
7. Song In B (a.k.a. Loser Gets It All)
8. Kiss Of Death ★公式より格好いい
9. I Won't Cry For You ★コージーが粋
10. Blues (a.k.a. Sick And Tired) ★リフがクール
11. Rusty Angels Can't Fly (a.k.a. Rusty Angels) ★公式より格好いい
Bonus Track
12. Kiss Of Death (with Ending S.E.)
Tony Martin - Vocals
Tony Iommi - Guitar
Neil Murray - Bass
Cozy Powell - Drums
Geoff Nicholls - Keyboards