国内盤です。
日本語解説・訳詞付き、ボーナス・トラック1曲入り
デビュー作『COME AWAY WITH ME』が世界的に大ヒット、グラミー賞8部門受賞という快挙をなし遂げた21世紀のシンデレラ・ガール、ノラ・ジョーンズの2ndアルバム。プロデュースは前作に引き続きアリフ・マーディンが担当しており、カントリー・ポップをベースにした癒し系ヴォーカルという点では前作の路線をきっちりと踏襲したものだが、ゲストを加えたり、カバー曲を入れたりと、よりバラエティ豊かな内容になっているのが印象的だ。
ゲストについていえば、<7>「クリーピン・イン」でドリー・パートンとデュエットしているのが目を引く。これはドリーの世界にノラが歩み寄ったといってもいいアップ・テンポのカントリー曲で、アルバムの真ん中に入っていることもあって、チェンジ・オブ・ペース的な役割を果たしている。ザ・バンドのレヴォン・ヘルムとガース・ハドソンが各2曲に参加しているのも新味。このほか、カサンドラ・ウィルソンのバックでも活躍のギタリスト、ケヴィン・ブレイトや、ノラの大親友ダルーもコーラスなどで参加している。
タウンズ・ヴァン・ザントの<6>「ビー・ヒア・トゥ・ラヴ・ミー」、トム・ウェイツの<11>「ロング・ウェイ・ホーム」、デューク・エリントンの「メランコリア」に自作詞をつけた<13>「ドント・ミス・ユー・アット・オール」の3曲がカバー曲だ。
(市川正二)
グラミー8冠を獲った処女作に続く待望の第2弾。聴いた瞬間に彼女だとわかるスモーキーな声が、聴く者をリラックスさせる。今作ではよりカントリーに傾倒し、ノラが好きだというザ・バンドのテイストも少し加わりジャズ指数はさらに減少気味。
「CDジャーナル」データベースより
ザ・バンドのリヴォン・ヘルム(ドラムス)とガース・ハドソン(ハモンド・オルガン、アコーディオン)が客演している曲が1曲ある。さらにガース・ハドスンはもう1曲にも客演しているが、それはタウンズ・ヴァン・ザントの「ビー・ヒア・トゥ・ラヴ・ミー」。97年に亡くなったテキサス出身のシンガー・ソングライターの『Our Mother The Mountain』(69年)からの選曲だ。また、ドリー・パートンがヴォーカルで客演している曲が1曲ある。これらの事柄から想像できるように、この新作は、『ノラ・ジョーンズ』の路線を踏襲した仕上がりになっている。なにしろオリジナル曲は、すべてバンドのメンバー(ノラを含む)の作品。そしてリズム・セクションはほぼ固定されている。すなわちこれはノラと彼女のバンドのアルバムであり、この点において前作と基本的に違いはない。
前述したゲストやカヴァーの選曲が物語っているように、音楽的にはカントリーやフォーク、ブルースなどを軸としたアメリカン・スタンダード路線。レコード会社で1回試聴しただけだが、演奏面では、リゾネーター・ギターが耳に残った。もちろん、音楽的には、ジャズの要素も見出すことができる。しかし、テキサス育ちのノラは、いわばピアノを弾きながら歌うパッツィ・クラインとでも言うべき存在。つまりジャズよりも、むしろカントリーとの距離の方が近い。
ノラ・ジョーンズは、アリシア・キーズのような大器ではない。ただし、存在としてのノラは、前述したようにパッツィ・クライン、あるいはパティ・ペイジのような米国ポピュラー音楽の保守本流に属するアーティストだ。こんなノラの音楽は、大多数の米国人にとってお母さんが焼いてくれたアップル・パイのようなものなのだろう、と推測する。素朴だが、大人になっても忘れられない“心の故郷”のようなものだ、と。その意味では、アルバム・タイトルに偽りはない。 (渡辺亨) --- 2004年02月号
「CDジャーナル・レビュー」より